「よし、完成した画像をPDFにまとめよう!」
WordやPowerPoint、デザインソフトで複数の画像を一つのPDFにまとめたとき、こんな経験はありませんか?
- 「あれ? 画像のピクセルサイズは同じはずなのに、PDF上での表示サイズが全然違う…」
- 「片方は小さく表示されるのに、もう片方は紙からはみ出るほど巨大になった…」
多くの人が一度は通るこの謎現象。実は、その犯人は画像の「DPI(ディーピーアイ)」にあります。
この記事では、なぜこんなことが起こるのか、そしてどうすれば解決できるのかを、世界一わかりやすく解説します!
結論:PDFは「デジタルな紙」だから

いきなり結論です。この現象が起きる理由は、PDFが「デジタルな紙」だからです。
「どういうこと?」と思いますよね。
実は、WebページとPDFとでは、画像の扱いに関する根本的なルール(基準)が全く違うのです。
- Webページの世界:基準は「ピクセル」。画像のピクセルを画面のピクセルにそのまま表示する。
- PDFの世界:基準は「物理的な寸法(ミリやインチ)」。A4サイズなど、現実の紙の大きさをシミュレートしている。
この「基準」の違いを理解するために、DPIの正体を解き明かしていきましょう。
DPIの正体:それは「おまじない」と「翻訳ルール」の二つの顔を持つ

DPIは「Dots Per Inch」の略で、「1インチあたりにいくつの点を印刷するか」という密度の単位です。このDPI、実は使われる場面によって役割がガラッと変わる、二つの顔を持っています。
顔①:画面で見るだけなら「おまじない」
Webサイトや、PCのフォルダで画像を見ているとき、DPIはほとんど意味を持ちません。
「印刷データは350dpi、Webデータは72dpi」とよく言われますが、この「72dpi」というのは、「これはWeb・画面用のデータですよ」と伝えるための、業界の慣習的な”おまじない”のようなもの。
WebブラウザはDPIの値を完全に無視し、画像の「ピクセル数」だけを見て表示します。800x600
ピクセルの画像なら、DPIが72だろうが350だろうが、画面上では同じ大きさで見えるのです。
顔②:物理の世界との橋渡し役「翻訳ルール」
ところが、現実世界のモノをデジタルデータにしたり、その逆にデジタルデータを現実に印刷したりするとき、DPIは超重要な役割を果たします。
DPIは、物理的な「ミリ」と、デジタルの「ピクセル」を相互に変換するための”翻訳ルール(計算式)”なのです。
【こういう時に使う!】
例えば、あなたが「幅10cmのチラシを印刷したい」と考えたとします。このとき、「幅10cm」という物理サイズを、何ピクセルのデジタル画像にすれば良いかを計算するためにDPIを使います。
高品質で印刷したい(350dpiの場合)
(100mm ÷ 25.4) × 350dpi = 約1378ピクセル
→ 1378ピクセルの画像を作る必要があります。
Webで使う程度の品質でいい(72dpiの場合)
(100mm ÷ 25.4) × 72dpi = 約283ピクセル
→ 283ピクセルで済みます。
このように、DPIは物理の世界とデジタルの世界を行き来するための「計算レート」として機能します。
謎現象のメカニズムを解明!

さて、いよいよ本題です。
PDFは「デジタルな紙」、つまり物理の世界をシミュレートしているため、先ほどの「翻訳ルール」がフル活用されます。
あなたのPDF上で起きていた謎現象を、PDF作成ソフトの気持ちになって再現してみましょう。
【用意したもの】
- 画像A: 横幅 1200ピクセル、翻訳ルールが 350dpi
- 画像B: 横幅 1200ピクセル、翻訳ルールが 72dpi
【PDF作成ソフトの思考プロセス】
1. 画像Aを配置するとき
- 「この画像は1200ピクセルか。翻訳ルール(DPI)は…っと、350dpiだな」
- 「じゃあ、この画像を紙の上に置くときの物理的な幅を計算しよう(ピクセル→ミリの翻訳だ)」
- 計算:
1200ピクセル ÷ 350 dpi = 約3.4インチ (約8.7cm)
- 結果: PDF上に幅8.7cmの大きさで画像Aを配置します。
2. 画像Bを配置するとき
- 「こっちの画像も1200ピクセル。翻訳ルール(DPI)は…おっと、72dpiだ」
- 「同じように物理的な幅を翻訳するぞ」
- 計算:
1200ピクセル ÷ 72 dpi = 約16.7インチ (約42.4cm)
- 結果: PDF上に幅42.4cmという巨大な大きさで画像Bを配置します。
もうお分かりですね。
ピクセル数は同じでも、DPIという「翻訳ルール」が違うために、PDFという「紙」の上で計算される物理的な大きさが全く変わってしまったのです。これが、謎現象のすべての答えです。
【解決策】PDFを作る前に、DPIを統一しよう!

原因が分かれば、対策は簡単です。
複数の画像を一つのPDFにまとめる際は、あらかじめすべての画像のDPIを同じ値(例:印刷なら300dpiや350dpi)に揃えておきましょう。
画像編集ソフトを使えば、DPIの変更は数クリックで完了します。この一手間を加えるだけで、画像の大きさがバラバラになる問題は二度と起こりません。
まとめ:今日のポイント

- DPIには「Web用のおまじない」と「物理の世界との翻訳ルール」の2つの顔がある。
- 「ミリ⇔ピクセル」の変換には、DPIという翻訳ルール(計算レート)が使われる。
- PDFは「物理的な紙」なので、この翻訳ルールを使って画像の大きさを決める。
- だから、ピクセル数が同じでもDPIが違うとPDF上での大きさが変わってしまう。
- 対策はシンプル!「PDF化する前に、全画像のDPIを統一すること」。
これであなたもDPIマスターです! もうPDF作成で迷うことはありません。ぜひこの知識を活用して、ストレスフリーな資料作成を楽しんでください。